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当サイトへお越しの皆様、こんばんはm(__)m
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また近頃更新が滞っておりまして申し訳ございませんm(__)m
来年も本年同様ちまちまと更新してまいりますので
たま~に思い出した時にお立ちより頂けたらありがたいです。
相変わらずなサイトですが(笑)来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、今年最後の「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。
一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-79-』



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船倉の奥に突如として現れた、悪霊と化してしまったトワさんはオレの身体を乗っ取り心を乗っ取った。
そんなことになるまでは、シリウス海賊団のみんなと離れるなんてこと、思いもしなかった。
もう二度と、絶対に離れたくなかった。

だってシンさんは、オレがこれまで生きてきて初めて好きになった人。
自分のことよりも大事だって、そう思わせてくれた愛しい人だから。

シンさんのおかげで繋がれた手の暖かさを知った。包まれた胸の、脈動の激しさを知った。
隣にいて温もりを感じているだけでこんなにも満たされることがあるって、初めて知った。
それを手離すこと以上の、元の世界に未練なんかなくて。シンさんがいない世界に、これっぽっちも興味がないとすら思った。



***



今は、オレがシンさんを好きでいることは、ひたむきで一生懸命だったトワさんを死してなお悪霊へと変えてしまうことであって。
それでシンさんが危険に晒されてしまうなら、思い上がりだと思われてもいい。離れることで愛しい人がどこかで生き続けてくれるなら、オレは迷わずそれを選ぶ。

あの後オレは、後片付けをするナギさんを手伝ってからまた医務室へ来ていた。
シンさんは今度は、目を閉じて静かに呼吸をして眠っていた。汗もそれほどかいてないし、顔の赤みも引いている。
良かった・・・明日になればきっと起き上がれるだろう。

傍らの椅子に腰かけてタオルを絞る。ピチピチと枕元の洗面器で跳ねた水がシンさんの瞼を濡らし、長い睫毛に水の粒を纏わせた。
「汗、拭きますね。」
眠っているシンさんに静かに声を掛けて絞ったタオルで汗を拭っていく。
形のいい額にすらっとした眉。海軍に撃たれた時の頬の傷跡は、まだ色濃く残っている。
鼻筋は、もはやうらやむ気持ちも起きないほど高くまっすぐに通っていて、下唇よりも薄い上唇は、よくその端を吊り上げて意地悪く笑われたっけ。
男らしい喉仏とくっきりと浮き出した鎖骨はとても色っぽくて、お風呂上がりに目にしてはドキドキさせられたな。
シャツの下の、日焼けを知らない白い左上腕には、オレの故郷ヤマトに伝わる伝説の神獣、鳳凰という鳥によく似た形の入れ墨が彫られている。
どうしてその入れ墨を入れたのか、一度でいいから聞いてみたかった。
同じく今は見えていないけど、厚い胸板も綺麗に割れた腹筋も、実は毎晩鍛錬をしているからだって知ってる。
荒れ狂う波に逆らうように舵を握る逞しい身体も、海や船や星のことだけではなく世の中の色々なことに精通する豊富な知識も、その努力のたまものなんですよね。
恥ずかしがって普段は表に出さないけど、シンさんは本当に努力の人。
この人について行けば、この先のオレの人生はもっと、彩多く豊かなものになるはずだった。

分かってる、分かってるよ。
オレはざわつく胸を抑えた。

あなたのためじゃないですよ、トワさん。間違えないで下さいね。決してあなたのためなんかじゃない。
自分がこの上なく意気地なしだってことも分かってる。こんな風に、言い訳がましいことを投げつけることでしか、自分を慰められないんだから。
それでもこの船を降りることを心が引き裂かれるような思いで決断したのは、ただただ自分のためです。
さっきハヤテさんに怒鳴られてはっと気づいた。シンさんのため、みんなのためなんて、オレが守りたいみんなよりも弱くて何もできないオレ自身が思うなんて、おこがましいことこの上なくて。
オレはただ自分がみんなから離れることで、安心したいだけ。
誰かが命を落とすのを目の当たりにするのが怖いから、逃げ出したいだけ。
そんな臆病者が、海賊王の船に乗ってちゃいけないだろう?
だから、それだけ。

ざわつく胸は、鎮まった。トワさんが納得してくれたのかも知れない。
それでまた気を取り直してシンさんの様子を見てみると、彼は目を覚ましたのか、まだ赤く潤んだ目でぼんやりとオレを見ていた。
オレをオレだって、分かってくれているのかな・・・
オレは黙ってその様子を伺う。そのうちオレの顔に視線を注いで、「ミナト」って言ってくれるような気がして。
シンさんはしばらくゆらゆらと定まらない視点で、あちらこちらを左目だけで見ていた。まるで何かを、誰かを探しているように。
そう思って眺めるシンさんの不安げな表情から、だんだんと意識が遠ざかっていくような気がした。
こんなに近くにいるのに。手を伸ばせば触れられるところにシンさんは横たわっているのに。
オレとシンさんとを隔てるかのように、薄い幕が二人の間を一枚横切っているような気がして、手も伸ばせなかったし声も出せなかった。

いずれシンさんは、落胆したような溜息をついてまた目を閉じた。

その時、カチャリと後ろで静かに音がして、扉が開きソウシさんが医務室に入って来た。
「どうかな?様子は。」
「あ、はい。だいぶ良さそうです。明日には起き上がれるかなって。」
「ああ、汗を拭いてくれたんだね。ありがとう。どれ・・・そうだね。あと一度か二度、熱冷ましを飲めば熱も引くだろうし、熱が引けば起き上がれるだろう。よく面倒見てくれたね。」
そう言ってソウシさんは、オレの頭を撫でてくれた。
「いえ・・・汗を拭くことくらいしか・・・。」
ソウシさんは、棚から色々な薬草を取り出して重さを図ったり、それらを乳鉢に入れたりしながら、
「そばについててくれたじゃないか。眠っていてもね、気配は感じるものさ。こんな時にこんな風に倒れたりして、シンだってきっと苦しんでいる。そんな時に大切な人がそばで見守っていてくれたら、安心すると思わない?」
と言ってくれた。
「・・・そうですね。確かにオレはそうでした。でもオレは、シンさんにとって足手まといでしかないから・・・」
オレがそう言うと、ソウシさんは机の前の椅子に腰かけふふっと笑った。

「トワがシンにとってどういう存在だったか、きみにはもう分かってるね?」
「・・・はい。」
「私が初めてシンと出会った時、彼はとても暗く荒んだ目をしていた。自分なんていつ死んでも構わない。だけど野望を叶えるための力が欲しい。当時私たちがいた海賊団に入ったのはただそのための力がほしいからで、そのためなら他人はおろか自分さえもどうなったって構わない、そう言って憚らない子だった。」

それを聞いてオレは、『恨むことでしか生きられなかった』と言ったシンさんの、寂しそうな横顔を思い出していた。


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2015.12.31 Thu l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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