上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
当サイトへお越しの皆様、こんばんはm(__)m
いつもご訪問頂き、ありがとうございます(つ∀`).+°o*。.'

「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。
一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-77-』



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:゚・:,。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



耳をつんざくような大砲の音。
人々が争い合う声。
人間の身体を貫通する弾の音。

砂埃で前が見えない。
捕らえられた腕が痛い。

目隠しをされて首を前に突き出させられて、振り下ろされた鉄の冷たい感触が、生きた最後の記憶。

助けて。ボクを助けて。
望みなんて叶わなくていい。ただそばにいたいだけなの。言葉を交わして温もりを感じられれば、それでいいのに。

ねえ・・・シンさん。



***



「そうか・・・そんな夢を・・・。」
オレが見た夢の話を終えると、ソウシさんはオレを抱きしめた。
「辛かったね。」
オレの両目から、こらえきれない涙が零れる。オレはそれを振り切るように首を横に振った。
「オレなんかより、シンさんが・・・トワさんにも・・・」
「ん・・・それは一先ず、シンの熱が下がってからにしよう。」
「・・・はい。」

ソウシさんも、オレたちが倒れてからのことを説明してくれた。
トワさんは、オレたちの身体を貫くように通り抜けていったんだそうだ。
そして船倉の扉を越えると煙のように消えてしまって、船を覆っていた冷気の雲も嘘のように晴れた。
船の身動きが取れるようになったので、今は不測の事態に備えて錨を上げ、近くの港に向かってゆっくりと進んでいる。
昔取った杵柄で舵を握っているのは船長なので、殊の外揺れると言ってソウシさんは笑った。

トワさんが煙のように消えた後、彼の気配はこの船のどこにも感じられなかったとソウシさんは言う。
だけど、オレが見た夢が本当にトワさんの想いなら、あんな風になってしまう程怒りに囚われてしまったのに、オレに不思議な夢を見させてシンさんに熱を出させただけで済むわけはない気がした。
かと言って、じゃあ一体何が起こるのかって説明もできないし想像もつかない。だから何の手の打ちようもない。

仕事に関して言えば、オレは十日間張り番をしていたので、何日かは張り番を免除してくれることにしたみたいだ。
そうと知っては何もしないではいられない。
一先ずシンさんのことはソウシさんに任せて、オレは洗濯をしたりナギさんを手伝ったり、船の中を掃除して回ったりして過ごした。
何かしていないと、また考えてしまうから。

今はまだ日が高い。みんなのためになることをしながら明るくて暖かい太陽の光を浴びていると、このままもう何事も起こらないような気がしてくるけれど、それが傾き水平線に近づくにつれ、不安が大きくオレの胸を襲い始めた。
真冬の吹雪の中に佇んでいるような冷気に包まれていたのが嘘みたいに、今は立ち上る湯気と食事のいい匂いに包まれている食堂にみんなといても、その不安はますます大きくなるばかりだ。
ナギさんのおいしい食事も半分も喉を通らず、でもみんなを心配させたくないから無理して押し込んだ。

怖い。何もしていないのが。
怖い。夜になるのが。

ナギさんがシンさんのために、野菜をとろとろに溶かしたスープを作ってくれたので、それを持って医務室へ向かった。
階段を降り切る前に、首だけ覗かせて船倉の扉を伺う。
それはいつも通りの顔をしていて、昨夜のように冷気の雲を吐き出してはいなかった。
ほっとして医務室の扉を開ける。
ベッドの脇の椅子に腰かけると、シンさんは昼間見た時よりも幾分呼吸が楽になったように見えた。

「シンさん、ナギさんがスープを作ってくれましたよ。食べられますか?」
声を掛けたが、シンさんは熱に浮かされて赤く潤んだ左目を、何かを探すように泳がせるばかりだった。
スープの器を診療机の上に置き、額のタオルを絞りなおした。
まだ熱い。
額や頬や首筋、鎖骨。見えている範囲だけでもと、オレは一生懸命シンさんの汗を拭った。
そうしながら、またとめどもなく涙が溢れてくる。

だって、オレのせいだもん。
またオレはみんなに迷惑をかけることしかできなくて、オレを庇ってくれたシンさんに、また危ない目に合わせてしまっている。
でもオレは、この船を降りたくない。
みんなと、シンさんと、離れたくない。

だけど、そんなオレのワガママがみんなを危険な目に合わせることしかできないなら、オレはもういっそのこと、船を降りてもいい。

『返して』って、頭の中に響いたトワさんの声。
『ボクのシンさんを、返して』ってことなんだろうな・・・。
哀しくて、切なくて、やるせなくて。
でもそれはオレも同じ。この人と離れることを考えたら、同じくらい胸がさざ波立つよ。

だけどオレは、生きてる。この船を降りても、好きな時に好きな所へ、行くことができる。そしてまた、新たな人生をやり直すことができる。
けれどトワさんにはもう、それができないんだ。
この船の、みんなの元にしか、寄る辺がないんだ。

こんなことで諦められるような想いじゃないけど。諦めるわけじゃないけど。
大好きな人たちをこれ以上傷つけたくない。

そんな風に考えていたら少しずつ涙が収まって来た。
シンさんの頬の赤味も、ほんの少しだけれど引いたように見える。
よかった。
ほっとして、今まで触れたことがなかったシンさんの頬に手を伸ばした。
少し髭が伸びていて、これも生きている証だと思うとそれすらも愛しく思えた。
初めて触れたシンさんの白い頬は、少しざらついていて、でも思いのほか柔らかかった。

今度こそ、本当にさよならです。
そう、決心を固めようとした時、シンさんがうわ言のように呟いた。

「・・・ト、・・・くな・・・」


――――――――――――――――――――――――――――――
  


よかったらこちらも覗いてみて下さい

素敵なサイト様がたくさん お気に入りの小説が見つかるかも


↓↓↓お気に召しましたらポチッと押して頂きますと、大変嬉しいです♪
関連記事
スポンサーサイト

2015.11.09 Mon l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://futariainovels.blog5.fc2.com/tb.php/355-f5753e06
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。