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「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。
一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-76-』



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船長を筆頭に、ついに船倉の奥のアレと対峙することになった。
船長は豪放磊落な人で、船中に溢れる不思議な白い冷気などものともせず、ずんずん階下へ進んで行った。

一瞬のためらいも見せずに開け放った船倉の扉。
その奥に彼は、未だに途絶えさせることもなく滝のような冷気を放ち続けながら立っていた。
それを見て船長は、「お前、トワなのか?!」と声を掛けた。それを皮切りに、他のみんなも口々にトワさんを慰めようとする言葉を掛ける。

そのことはトワさんをひどく動揺させたみたいで、彼から流れ出る冷気の波は弱まり、動揺と哀しみの感情をはらんで頼りなく揺れるばかりになった。
だけど、オレが牢獄でトワさんに会って抱きしめたいと思ったことを思い出した時、突然オレは、トワさんが発する哀しみの感情に取り込まれてしまった。



***



「シンさん・・・怖いよ・・・」
オレの口から出た言葉なのに、まるでオレの声じゃないみたいだった。さっきのソウシさんの霊媒師の話を思い出した。
でも思い出したとたんに、掌からさらさらと零れ落ちていく砂のように、捉えどころをなくしていく。
考え事が、まとまらない。怖いのはオレ?それとも・・・

「トワ!よせ!」
オレを後ろから羽交い絞めするみたいにぎゅっと強く抱きしめ、シンさんが焦ったような声音で叫んだ。
その途端、トワさんがものすごい勢いで奥から流れるようにこちらに近づいてきた。
目の前に、トワさんの顔が迫る。鼻先が触れそうな距離で初めて見た彼の顔は涙で濡れていて、目だけが赤く燃えるように輝いていた。

『返して・・・』

頭の中にそう声が響いた時、シンさんがくるりと身体を反転させてオレを内側に庇うように身体を丸めた。
「シン!」「ミナト!」
みんなが口々に叫んだ。
次の瞬間、身体の中を冷たくて痛くて哀しい怒涛のような感情が通り抜けて行って、オレとシンさんは、くずおれるようにその場に倒れた。

次に気付いた時、オレはシンさんのベッドの上にいた。
ゆっくりと身体を起こす。
思い出すまでもない。全部、覚えている。
ハッとして、辺りを見回した。シンさんがいない!
オレはベッドを飛び出して、ソウシさんの部屋をノックした。

物音に気付いたのか、ソウシさんの部屋の隣の、医務室の扉が開いた。
中から出てきたのは、ソウシさんだ。
「ああ、ミナトくん、起きたかい?身体はどう?何ともない?」
彼は優しく問いかけながら、オレの額に冷たい掌を当てた。
「オレは何ともないです。それよりシンさんは?!大丈夫ですよね?!」
早くこの目で、シンさんが無事でいることを確かめたくて、オレは焦ってソウシさんに縋りついた。

実は、寝ている間に夢で見たんだ。
トワさんは、イストーリオ海戦の折に処刑されてからずっと、実体を伴わずにこの船に、シリウス海賊団のみんなと共に人知れず存在していた。
せっかく助かってみんなの元に戻ったのに、誰も気づいてくれない。声も聞こえない。触れることすら叶わない。
自分は海戦の混乱に捕らわれ、投獄され、処刑されて死んだのだと気付いた時、大いなる絶望に陥った。
それでも時を経て自分の身に起きた現実に納得し、天界への迎えを待つ間名残惜しくこの船を彷徨っていた時、オレが転がり込んで来た。
オレは、トワさんと違って生きて実体を持ち、シリウス海賊団のみんなと話し、触れあい、打ち解けていった。
それも仕方ないと諦めようとしていたけれど、オレは徐々に、トワさんが焦がれてやまなかったシンさんに恋心を抱き、シンさんもオレにトワさんの面影を見た。
それだけならまだいい。でも、シンさんがオレに、トワさんの面影を追うだけじゃなく、オレ自身として向き合おうとしている。
それが許せない。

そう、抑えきれない感情を持て余して船倉の奥で怒りを燃やし始めている夢。オレが、トワさんの身になり代わって見た、夢。

だからオレは、心配で仕方がなかった。
それならいっそ、シンさんを連れて行こう。トワさんはそう思ってシンさんを道連れにしようとしているんじゃないかって。

医務室の扉に飛びついて、むしり取るようにノブを引き、開けた。
「・・・良かった・・・。」
中には、診察用のベッドに横たわって眠る、シンさんの姿があった。
浅く早いけれども呼吸をして、上に掛けられた布団が上下している。

ソウシさんが、後ろからオレの肩に手を乗せた。
「まったく君たちには、心配させられてばかりだよ。」
咎めるような言葉だけれど、口調は優しい。
「ソウシさん、ごめんなさい。」
「いいのいいの。元気なんだから。」
そう言って、頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。

二人でベッドの脇の椅子に腰かけると、シンさんの額に大粒の汗が浮かんでいるのに気付いた。
「あの後からずっとこうなんだ。でも大丈夫だからね?昨夜話した遺跡のお宝の時と同じ症状だ。今はあの頃よりもよく効く熱冷ましも作れるようになったし、二、三日で良くなるよ。」
言いながらソウシさんは、枕元の水でタオルを絞ってシンさんの額に当てる。
ああ、だからさっき額に当ててくれたソウシさんの手は、ひんやりと冷たくて気持ちが良かったんだな。

オレは、滲む涙をこらえながら、さっきまで見ていた夢の話をした。


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2015.10.30 Fri l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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