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「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。
一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-75-』



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船倉の最奥で、身も凍るような冷気を出しているヒトの形をした影は、幽霊だろうという結論に達した。
これまでにそういうモノを見たり聞いたりした人はこの中にはいなかったけれど、シンさんは文献から、過去に目撃されてきた幽霊船の記述を発見し、ソウシさんは、以前にそれらしき影を見たことがある、と言った。
その時に起こったことのあらましを聞いていると絶妙の頃合いで船長が現れ、オレとハヤテさんはちょっとした混乱状態に陥りかけた。
それなのに、なぜかそのオレとハヤテさんが船長のすぐ後ろについて船倉へ様子を見に行こうとしている。

「要はアレだろ?幽霊の言い分を聞いて望みを叶えてやればいいんだろ?」
豪快な船長は、いついかなる時も豪快だ。
はっはっは、と笑いながら、船長は半ば強引にオレたちを連れて先へ進んで行くんだけれど、その背中が頼もしくもあった。



***



船長が船長命令でハヤテさんを連れ、ハヤテさんはオレを無理矢理引きずり、という形で下に向かうことになったのだけど、結局全員で船倉に降りることになった。
航海室には未だ、冷気は上がって来てはいなかった。
それもそのはず。その為にソウシさんが、『甲板に続く扉を開けて、航海室に移ろう。』って言ったんだから。
その代り、と言ってはなんだけど、食堂にはすでに白い冷気が雲のようになって食堂中に満ちていた。
「うおぉ、何だこりゃぁ。」
さすがの船長も、これには驚いたようだ。
開けていった甲板に続く扉から、ひっきりなしに冷気は逃げていく。
なのに下から立ち上ってくる冷気も途切れることなく、食堂を満たしている。といった所だ。
「寒ぃな。」
「さっきよりも酷くなってますね。」
冷気が逃げていった先の甲板も、雲を抱いているかのように白い。それが両舷を海原へ向かって滑り降りていくさまは、キレイですらあった。
でもこれが自然の物ではない証拠に、海原へ降りて行ったはずの白い冷気が、しばらく行くとまた立ち上っているんだ。
まるでこの船の周りを、円天井のように囲い込んで覆ってしまっている。

船長は、歯の根こそ合わないものの、臆する様子も見せずに階段を一歩一歩降りて行く。
オレたちの部屋がある階の廊下に降り切った、左手にある船倉の扉も、一瞬もためらうこともなくノブをひねって開けてしまった。
その途端オレたちを襲う、これまでとは比べ物にならない冷気が体温を奪い、頬を叩き、冷たくて痛い。

「うううぅぅぅ」
船長の次に多くの冷気を浴びたハヤテさんは、両腕で強く自分を抱きしめて、小刻みに足踏みをしてその寒さと冷たさに耐えている。
オレを含む、他のみんなも同様だ。
うめき声こそ上げないけれど、自分で自分を抱きしめて暖を取っている。

ずかずかと船倉に足を踏み込んだ船長は、この今やとてつもない凶器へと成長しつつある冷気の発生源に向かって呼びかけた。
「オイ、誰だ、俺の断りもなく勝手に船に乗り込んでる奴ぁ。話聞いてやるから出て来いよ!」
呼びかけ方も乱暴すぎる。
もしアレが気分を害してこの中の誰かを呪ったりしたらどうするんだろう・・・。

そんなオレの心配はよそに、突然奥から流れ出して来る冷気の波が急に弱まり、戸惑うかのように揺れ出した。
『せん、ちょう・・・』
アレが、今まで発したこともなかった声のようなものを出す。
出す、というか、頭の中に直接響いてくる感じだ。

「オイ、トワか?!お前、トワなのか?!」

冷気の波の、揺れが大きくなった。
動揺している気配が、オレにも伝わってくる。
それにしてもやっぱり、船長の目から見てもアレはトワさんに見えるんだ・・・!

なんだか恐ろしくなってオレは、一歩後ずさった。すると、背中がすぐ後ろにいた人に当たった。
振り返って見上げると、それはシンさんだった。
彼はオレの様子に気付いて、でも目はトワさんを見据えたまま、後ろからそっと抱きしめるかのようにオレの両方の二の腕に手を添える。
大丈夫だ、と、シンさんはオレの耳元で囁いてくれた。
船長の、トワさんへの説得は続く。

「残念ながら、お前は死んだんだ、トワ。五年前の今頃だ。イストーリオ海戦で捕らえられ投獄された海賊は、むごい殺され方をしたと聞いた。助けられなかった俺たちを許してくれ。」
「私たちはね、トワ。今でも君のことを忘れていないよ。ナギもシンも、ハヤテもそう。あの時一緒だった他のみんなも、今は別々の海賊団になったけれど、みんなトワのことを覚えてる。私たちに力がなくて、ごめんね・・・」
ソウシさんも続けて言い募る。動揺を表す冷気の波は激しさを増していて、今や哀しみの感情も溢れている。

「俺たちに何を聞いてほしいんだ?できることがあるなら望みを叶えてやる。お前が好きだったビーフシチューの他に、食いたいものはあるか?」
「そ、そうだぞ。ナギ兄はいつも、い、今くらいの頃になると、決まってビーフシチュー作ってくれるんだ。お前のためだぞ、トワ。他にできること、あ、あ、あるか?」
ナギさんも、寒さで口が回らなくてどもっているけれどハヤテさんも、とても優しい口調で話しかける。まるで、幼い弟に話すみたいに。

トワさんは、みんなにどれほど愛されて可愛がられていたいのか、それだけで分かる気がした。
海軍本部の牢獄に捕らえられてホラツさんからトワさんの話を聞いた時、オレはふと、彼に会って抱きしめたい、と思ったことを思い出した。
そのことに気付いた時ほんのりと頬に温もりを感じて、自分の目から涙が溢れているのを知った。
オレが哀しいんじゃない。トワさんが発する哀しみの感情に、取り込まれていくみたいだ。
哀しくて寂しくて、みんなとはぐれて一人死んでいくのが辛くて。
一番大事な人には、想いを告げることすらできなかった。だって、そんなことできる立場じゃなかったから。
その人には、他に想う人がいたから。
その人の名は・・・

「シンさん・・・」


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2015.10.16 Fri l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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