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「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。
一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-72-』



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すっかり夜も更けた。あと二、三時間もすれば夜が明ける、そんな時刻だ。
けれど、船長を除く全員が、今は食堂に集合している。

もうすぐ十日間張り番の刑が終わりそう、という時になって、船は急に立ち込めてきた霧に包まれた。
羅針盤の針はぐるぐると回り、その代わりを取りに来た船倉からは冷凍庫みたいな冷気が溢れ出していた。
決死の思いで(いたのはオレだけかも)全員で中に入り、冷気を生み出しているモノ・・・それはヒトの形をしていた。に声を掛けると、そのヒトは振り返った。

そして、そのヒトに向かってシンさんが珍しく驚きの表情を隠しもせずに声を掛けた。
「トワ・・・!」
って。



***



食堂に船長以外全員集合してはいるものの、誰一人声を発しようとしない。
ナギさんが夕食の残りのスープを温め直してくれたけど、それはほのかに湯気を立てただけですぐに冷たくなってしまった。
下から積み重なるようにして昇ってくる冷気が、食堂にも満ちてきているからだ。
シンさんがみんなの冬用のコートを持って来てくれてそれぞれ身を包んでいるけれど、ちっとも寒さをしのげないどころかどんどん気温が下がっていく。
「ダメだ。このままじゃみんな凍えてしまう。甲板に続く扉を開けて、航海室に移ろう。」
ソウシさんがそう提案して、食堂の上の階にある航海室に移動した。

航海室の真ん中にある会議机、その机の真ん中に置かれた羅針盤は、未だに磁針がくるくる回り続けていた。
「気持ち悪ぃ」
それをまじまじと見つめて、ハヤテさんが言う。
「うん。何だろうね・・・」
ソウシさんがつぶやくと、ナギさんが何の前置きもなく突然その磁針につと指を当てた。
「ぅおい!ナギ兄!何してんだよ!!」
「いや、どうなるかと思って。」
ナギさんが止めた磁針は、大人しく止まっている。
でも、指を離したとたんに磁針は再び、くるくるくるくる、当て所もなく彷徨うかのように回り始めた。

シンさんは、棚から古い文献を出して来て読んでいる。
することのないオレは、さっきから一つのことが気になって仕方がなかった。
誰も言いださないのが却って気味が悪い。それはつまり、ここにいるオレ以外の全員に、共通認識があるってことだ。

「ソウシさん・・・さっきシンさんが言ってた『トワ』って・・・この間チラッと話してくれた、あのトワさんのことですか・・・?」
思い切って、話をしてくれた張本人であるソウシさんに聞いてみた。
その瞬間、文献のページをめくっていたシンさんがその手を止めて、物凄い顔でオレを睨む。
それを見て、ソウシさんが弁解してくれた。
「ああ、ごめん、シン。つい懐かしく思い出してしまって、二人が戻って来た晩にぽろっと話してしまったんだ。」
「・・・。」
オレの方から無理に聞きだした訳じゃなかったけど、怖くてシンさんの顔が見られない。
事情を知らないオレ以外の四人の間に、不穏な空気が流れる。

事情を知らないと言っても、あっちの話とこっちの話をつなぎ合わせてオレにだってもう分かっている。
ホラツさんが教えてくれた、シンさんが昔、周りから恋人かとからかわれる程可愛がっていた手下。
オレと同じように海軍に捕らえられ、オレとは違って処刑されてしまった弟分。
きっとその彼が、ソウシさんが話してくれた『トワ』さんなんだろう。

「話してもいいかい?シン。」
ソウシさんが、伺うようにシンさんの顔を覗きこむ。
シンさんは本を抱えたまま、みんなにくるりと背を向けてしまった。
「別に、構わないですよ。」
そう答えるシンさんの声からは、何の感情も読み取れない。

「トワっていうのは、イストーリオ海戦よりも前に私たちと同じ船に乗っていた仲間でね。今ミナトくんはいくつだったっけ?」
「あ・・・18です。」
「え、お前18なの?」
「はい。言ってなかったでしたっけ?」
「聞いてねぇよ。なぁ、ナギ兄。」
「ハヤテ、黙ってろ。話が進まない。」
「・・・へーい。」
「じゃあ、今のミナトくんと同じ年だ。イストーリオ海戦っていうのは、聞いたことあるかい?海賊と海軍との間で大きな戦争が起こったわけだけれど、そのどさくさで海軍に捕まってしまって、助け出してあげられなかった子なんだ。」

海戦後は海軍に捕らえられた海賊が多すぎて、オレの時みたいにいちいち一人ずつ断頭台へ送ったりしなかった。
いつ処刑されたかも分からず、遺体も引き取ってあげられなかった。

「ミナトくんに少し・・・似てるよね。」
ソウシさんの問いかけに、誰一人答えなかった。だから却って、それが答えとなってしまった。
似てるんだ、オレ。トワさんに。
ハヤテさんもナギさんも、気まずそうに視線を逸らした。
「だから今でも、私たちはトワに対してはやるせない思いでいっぱいだ。命日も知らない。お墓も建ててあげられない。毎年イストーリオ海戦の頃に思い出して悼んであげることくらいしかできないからね。」
「・・・イストーリオ海戦って、五年前のいつごろのことだったんです?」
「ああ、そう言えば・・・先日のごたごたですっかり忘れていたけれど、だいたい今ぐらいだよ。」
「もしかして、今日、なんじゃないですか?・・・トワさんの命日。」
「分からない。仮にそうだとしても、今まであんな風に私たちの前に姿を現したことなんてなかったんだよ。どれだけ私たちが会いたいと願ってもね。」
「そうでしたか・・・。でもアレがトワさんとは限らないし・・・じゃあ何なんだって聞かれても困るんですけど・・・。オレ、生まれてこの方ああいうの見たことないんで分からないんですが、アレは・・・」

幽霊、と言葉にして言ってしまうのが怖くて思いっきり濁して言ったのに。
「幽霊だろうな。」
シンさんが、こちらに背中を向けたままはっきりと言い切った。


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2015.09.20 Sun l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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