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「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。

一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-64-』



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まるで自分の人生じゃないみたいだな。
よくあるおとぎ話とか、酒場で聞いたことがある武勇伝みたい。

おとぎ話ならこの後王子様が白馬に乗って現れて、囚われの姫君を颯爽と攫って救ってくれるんだ。
武勇伝だとしたら、首尾よく縄を解くことに成功した、誤って捕らえられた勇者が取り囲む暴漢たちをばったばったとなぎ倒して風のように去っていくんだ。

そりゃあ、まだ幼い子供の頃に読んだ絵本の登場人物には憧れたよ。
だけどそういうのって、自分には絶対に起こりえないからで。

自分の人生がこんなに劇的になるはずがないって、心のどこかで安心してるからでしょ。



***



オレは、囚われの姫君でも悲運の勇者でもない。
ただの貧乏な村に生まれた、一生奉公人で終わる人生だったはずなんだ。

だから、時計塔広場まで続く人垣の間を、永遠に続くとも思えるこの道のりを、ただちくちくと矢じりで縄を擦りながら歩き続けるしか術がない。
焦るな焦るなと言い聞かせるほど、手が滑って上手くいかない。
手首や指は嫌って程こすって切れるのに、肝心の縄が切れていく手ごたえがない。
それなのに、いつ後ろの海兵に見つかって手首を捩じりあげられるかとそんな想像ばっかりが逞しく膨れ上がっていく。

周りの人垣がオレに向かって何か呼びかけている。
それぞれが口々に何か言っているようでもあり、全員が一斉に同じことを言っているようでもある。
そんな群衆の叫び声が頭の中にぐわんぐわんと木霊して、物が上手く考えられない。

この作戦が失敗すれば、それは死を意味する。
だけどやっぱり、どこか遠い自分じゃない人の物語をなぞっているみたいで、現実感がない。

縄が、うまく切れない。

ハヤテさんに、謝りたい。

ナギさんのご飯が食べたい。

ソウシさんに、『怖かっただろう』って言って抱きしめてもらいたい。

リュウガ船長に『この大馬鹿者が』って叱ってもらいたい。

・・・シンさんに、会いたい。

ブツッ、と一際大きな手ごたえが手首に響いた。
縄が切れそう。筋一本残して繋がっている、そんな感触が伝わってくる。
でもまだだ。まだ全部切れちゃダメだ。後ろの海兵に見つかる。

いつ?どこで?
もう、このまま縄を解いて今すぐ逃げ出したい。
だって、オレの首と胴を切り離すための断頭台が、目と鼻の先に見えている。
やっぱりオレはお姫様でも勇者でもないならいっそのこと、あの陽の光を受けて誘うようにギラリと輝く鉄の刃に、幕を下ろしてもらいたい。
上手く息が出来ない。涙が頬を伝って流れるのが分かる。

泣いちゃだめだ。泣いたら前が見えない。
もうオレは、人垣の向こう側にいる民間人じゃないんだから。
大丈夫。オレにもできるはず。だって、海賊王が率いるシリウス海賊団の一員なんだから。

いつか来る契機を見落とさないように、気を落ち着ける為に大きく息を吸って吐いたその時。

ドオオォォン・・・!

港の方から、辺りの大気を揺るがすような轟音が鳴り響いた。
その途端、オレの前後を固めていた海兵二人が、身を低くして動きを止めた。
何事が起きたのかと、周りの人垣はわらわらと崩れる。

ドオォン・・・!ドドオォン・・・!
続けざまに辺りをどよめかす音は、耳をつんざくような大音響で轟いている。
そんな中、さすがは海兵と言ってもいいだろう。彼らは怯んでこそいるが民間人より冷静だ。
オレの腰縄を掴んで「伏せろ!」と身を屈ませようとする。

それが何故なのか、オレにも分かる。彼らもまた、聞き慣れた音なんだ。
なぜならこれはオレも聞き慣れている音、船の大砲の音だから!

今だ!
オレは、渾身の力で手首に残った荒縄を引きちぎった。
海兵が手綱のようにして握る腰縄も、思いっきりひったくる。屈んでいたついでに、足元の砂を一握り掴んで彼らの顔に投げつけた。
「貴様!何をする・・・!」

波のように引いた人垣のおかげで、道幅はオレが海兵に曳かれて来た時よりずっと広くなっている。
その道の真ん中に立って、オレは叫んだ。

「シンさん!オレはここにいます!」

民衆が舞い上げる砂埃と轟き渡る大砲の音で、目はよく見えないし耳もよく聞こえない。
だけど、オレが感じているよりずっと近くにシンさんはいてくれるような気がしていた。

「シンさん!シンさん!!」
さっき海兵に殴られて切れた口の端が痛むのも気にせず叫ぶ。

もしもここにシンさんが現れなかったら、その時オレは、潔く諦めるよ。


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2015.05.03 Sun l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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