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「太陽と、月のあいだ。」
更新いたします。

一つ前のお話はコチラ→『太陽と、月のあいだ。-63-』



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オレは、ここギッデルンからは海も陸も遥か隔てた、ヤマトという国の山深いアイゼン村で生まれた。
村全体が貧しくて、痩せた土地で萎びたような食物を育てて自分たちの口を養い、木の皮で編んだ細工物や裏の川で釣れた魚を売って、その日をやっと暮らすような。
そんな村で生まれ育って、ヤマトの中では最も大きく栄えるイカルガという港町へ出稼ぎに行ったのだって、細く長い伝手をようやく辿った奇跡のようなものだった。
そうじゃなかったら、一生をその貧しい村で過ごし終えるはずだった。

そんなオレが、次から次へと休む間もなく訪れる激しい衝撃の波に耐えている。
自分の身体もろくに支えることが出来ないほどだ。心細くて仕方がない。



***



一生かかってももう二度と訪れないんじゃないかとも思えた、夜明けが来た。
明けない夜はないんだな、なんて、ぼんやりと考えた。
そうしてできた、頭の中の考え事の隙間に、昨夜はあえて深く考えなかったことが忍び込んできた。

この世のすべての海賊を憎むような鋭い緑の目をした海軍本部中将、クラウス・フォン・ザクセンが、オレが焦がれてやまないシンさんの父親だって言うこと。
そう言われてみれば、いつかの夜にチラッと見えた普段は眼帯の下に隠されたシンさんの右眼は、ザクセン中将と同じ、緑色をしていたような気がする。
声も似ていた。
この牢獄で目を覚ました時。
麻酔が切れかかって、靄がかかったようなぼぅっとした状態で聞いてシンさんと間違えたほどだ。
顔にも面影がある。
以前、フリッツさんの店で差し向かいで問い詰められていた時、シンさんが年を取ったらこんな感じかなぁ・・・なんて、呑気に眺めていたのを思い出す。

そうしてオレの頭の中で、ザクセン中将とシンさんの顔が写し絵のようにすぅっと重なった。

全部全部、それもそのはずだったんだ。
だって、本当に親子だったんだから。

・・・そうだ。だったらオレは、心細さを感じている場合じゃない。
自分で蒔いた種だけど、だからこそオレなんかの為に親子が争うなんてこと、してほしくない。
処刑の刻限になってここから出られたら、さっさと縄を切って戦いが始まる前にシンさんと逃げないといけない。

早く刻限が来ればいい・・・!

そう思っているオレの願いが通じたのか、その時は訪れた。
夜が明けるまで感じていた時間の流れとはまったく違う速さで、まるで別の世界に迷い込んだみたいだ。

鉄格子の前に、年若い海軍兵が二人やって来た。
「出ろ。処刑の刻限だ。」
一人がガチャガチャと牢獄の鍵を開けている隙に、見つからないようにしてオレは、ホラツさんからもらった黒い石の矢じりをポケットから出して指の間に落ちないように挟んだ。
もう一人が牢の中に入って来て、オレに後ろ手に縄を巻く。
オレはぐっと拳を握って、おとなしくされるがままにした。

「シリウス海賊団の海賊を処刑するって触れ回ったら、物凄い数の見物人が出ているぞ。」
鍵を開けた方の海軍兵が、唇の端を片方いやらしく吊り上げて嗤う。

「そうですか。そんなに大勢の見ず知らずの人に看取られるなんて、光栄です。」
オレは表情も変えずに言う。
「減らず口叩きやがって。」
バキッ
乾いた音が牢獄内に響いた。

「つっ、」
唇の端が切れたみたいだ。床の足元に、ポツリと小さな赤い水玉ができた。
海軍兵が肩から吊り下げてる銃剣。そんな物の固い柄で殴りやがって。
海軍にとって、海賊は人間ではないんだな。

オレたちは、他の海賊団とは違って奪うことも殺すこともしないのに。

でも今は、そんなことに腹を立ててる場合じゃない。
ここから時計塔広場までどのくらい掛かるか分からないけど、オレの首が胴から離れる前に手首の縄を切らないといけない。
兵士の一人はオレの前に立って腰に回した縄を引き、もう一人はオレの後ろから、肩をどつきながら歩き出した。
矢じりの縁は思ったより鋭い。
時々オレの指先や手首を抉った。

隣の牢の前を通りかかった時、チラッと中に視線を投げる。
この時初めて目にしたホラツさんはまるで、通信局がある通り沿いにあった商店のおやじさんのような身なりをしていた。
彼もまた、フリッツさんと同じように街に溶け込んで生活しているギルドの一員だったんだ。

声を交わせばホラツさんもシリウスと関わるがあることが分かってしまう。
だからオレは、眉と目尻を下げて今にも泣きそうな顔でオレを見つめる彼に、目だけを細めて微笑んだ。

伝わったかな。伝わってるといいな。
ホラツさんがここへ来た時、海兵に「盗っ人」って言われてたから、大した罰もなく出られるかも知れない。
オレが助かった後、ホラツさんをどうやってここから出してあげるのか、どういう手筈になってるのか、そこまでは分からないけれど、酷いことをされないでほしい。
本当なら、オレが直接この手で助けたい。顔を見てお礼を言いたい。
だけどきっとそれは叶わないから。

ありがとう、ホラツさん。
いつかまた、会いましょう。


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2015.04.27 Mon l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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