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初めて訪れた土地。初めて出会った人。初めて見る風景。
戸惑いながらもオレは、そんな事どもに少しだけ胸躍らせる日が続いていた。

そんなある日見つけた、絵画から切り取ったみたいなキレイな景色の中に。
シンさんと二人で入り込めたらいいのになって思って。

浮かれていたのかも知れないな。
シンさんに守られるように過ごしていたから。

海軍中将に目を付けられたことなんて、すっかり忘れてしまっていた。
鉄格子の向こうからオレを睨むザクセン中将の眼差しは、オレに何も言わせない威圧感を放っている。
二人を隔てる鉄の棒の冷たさ以上に、その瞳がオレ達の立場の違いを語っている。

『海賊』、と憎々しげな声で中将は言った。
オレは、海賊として捕らえられたのだと。

「麻酔針がよく効いていたようだな。よもや、先日のように咎め無しで帰されるとは思っていまいな。」
「・・・」
「私の忠告通りあの夜現れていれば、今頃は民間人として故郷へ向かう船の上にいたと言うのに。」
「・・・」
「答えよ、海賊。何が貴様をそうさせた。」

何がオレを海賊にさせた・・・?

違う。オレは何かによって海賊にさせられたんじゃない。
自ら選んで海賊になったんだ。

そう言ってやろうとして何度か口を開きかけた。
だけど、言葉は出て来なかった。

だって、この人に何が分かる?

きっと何も分かってもらえないだろう。
オレが言葉を尽くして、オレの身の上やシリウス海賊団の皆の人柄を説明したって、きっと何も変わらないんだ。
なぜなら、オレはもう実際はどうあれ海軍にとってはれっきとした海賊で、この人はどこまで行っても海軍の軍人なんだから。

何も喋ろうとしないオレを黙って見つめていることに飽きたのか、中将はオレに背中を向け、言った。
「まあ、いい。何をどう言い訳しようが貴様が海賊になり下がったことには変わりはない。海賊が海軍に捕らえられた場合、その末路がどうなるかは知っているだろう。」

海軍に捕らえられた海賊の末路。
それは、知っている。

イカルガにいた頃、遠くから目にしたことがあった。
街の噴水広場だ。朝から海軍の連中が、慌ただしそうにあちこち駆け廻っていた。
よく晴れた航海日和で、だから港にはたくさんの船が集まっていた。

オレは買い出しの途中で、その様子に足を止めた。
何してるんだろう。そう思った。
パッと見ただけでは何が行われようとしているか分からなかった。

軍服に身を包んだ、オレと同じかもう少し年上の男たちが、上官と思しき制服の男に急かされどやされながら、角材で櫓のようなものをいくつか組んでいた。

ふと隣を見ると市場で見かける漁師のおじさんが立っていて、尋ねてみるとおじさんはこう答えた。
『海賊がとっ捕まったのさ。』

そう聞いてもオレには、まだ何のことか分からない。
なおもおじさんに尋ねると、こう言われた。
『面白いもんが見られるぞ。間もなくだ。』

ふぅん、と思って、間もなくなら見て行くか、と思った。
そうこうするうちに、櫓は完成したようだ。奥の、少し高い櫓には人が上り始めていた。
年配の、やっぱり軍服に身を包んだ男が3人。並んで腰かけた。

向こうの通りの方から、誰か来る。
あれがとっ捕まった海賊だろうか。

オレの前にも後ろにも人垣ができて来て、身動きが取れなくなってきた。

海賊と思しき、髪も髭も伸び放題の男は、前後を軍人に挟まれて、綱で繋がれて引っ張られ押されしながら手前の小さめの櫓に向かっているようだ。

前後の軍人と一緒に櫓に上った海賊は、その場で膝を付けさせられた。

イヤな予感がした。
漁師のおじさんは、面白いものが見られる、と言ったけど、最後まで見ない方がいい気がする。
でも人があまりにも多すぎて、前にも後ろにも進むことができない。

だったら視線を外せばいいのに、オレの目は櫓の上の海賊に釘付けだった。

海賊の右と左に向かい合って立った軍人は、腰の剣をスラリと抜いた。
と同時に、奥の高い櫓にいた軍人が、手回し式の警報を鳴らす。

それを合図に、ギラリ、と、剣が反射した太陽の光が、オレの目に飛び込んだ時。



赤い飛沫が飛び散ったのが見えて。




海賊にその首はなかった。


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2014.10.11 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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