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病後の回復訓練を兼ねて、オレはハヤテさんとギルドの地下通路を歩いてドックへ向かっていた。
この通路は、ギッデルンの港町の至る所に張り巡らされている。

ハヤテさんの足手まといになってしまったオレは、ドックまで行くことを断念して途中で待つことにしたんだけど、そこで外へ通じる扉を見つけて出てみるとそこは、今まで見たこともないような、白い砂浜と青い海と空が絵のようにキレイな岸壁に囲まれた静かな入り江だった。

いつか、シンさんと来てみたいな・・・なんてうっすら思ったのは覚えてる。
だけど、その先がまったく思い出せないんだ。
早く戻らなくちゃ。
ハヤテさんが心配する。

シンさんが、オレの顎を掴んで顔を自分に向かせながら、聖母のような微笑みをたたえている。
『いっそのこと、そのまま海の藻屑になってしまえばよかったのに。』

・・・違う。シンさんは、そんなこと言わない。
あの人は、オレが勝手にくたばるのは許さない。そういう人だ。
だからオレは、これが夢だってすぐ分かった。

これが夢ならオレは、今は寝ているってことになる。

早く起きなくちゃ。
きっとまた、みんな心配してる。
目を開ければ、シンさんの、眉間に皺を寄せた心配そうな顔が、きっとオレを覗いている。

だけど、身体が言うことを聞かないんだ。
起き上がりたいのに。寝返りを打ちたいのに。

動かそうにも、小指の先すらもピクリとも動かせない。

「んん・・・」

声も出ない。
喉の奥から、掠れたような音が出るだけ。

だけど誰かがそばにいて、それに気付いたらしい。
コツコツと靴音を響かせて、こっちに近付いてくる。

シンさんかな・・・。
ごめんなさい。オレまた、心配掛けるようなことしちゃったみたいです・・・。

「気がついたか。」

ああ、やっぱり。
オレを探してまた走り回らせちゃったのかな・・・ちょっと疲れてるみたいだけど、紛れもなくシンさんの声だ。

早く、起きなきゃ。

「気がついたのなら、起きろ。」

いつになく冷たい声だ。
やっぱり怒ってるんだな。早く起きて、謝らなきゃ。

「シリウス海賊団の、ミナト。起き給え。」

・・・えっ?!
誰だ?!

今までうつらうつらとしていた頭が急にハッキリとして、一気に目が覚めた。

夢うつつで聞いていた声は確かにシンさんのものだったのだけれど、似てはいるけど全然違う。
これは、シンさんじゃない!!

そこでやっとオレは目を開けることができた。

最初に視界に飛び込んできたのは、石造りの天井。
ギルド本部の、オレの部屋じゃない。

ガバッと身体を起こすと、いつかみたいにまた少しめまいがしたけれど、今はそんなことに構っている場合じゃない。

きょろきょろと辺りを見回す。
肌色の切り出したままの石が積まれたような壁。
部屋の隅に、仕切りもなく便器が置かれている。
オレが寝ているのは、板に足を打ち付けただけのような、机みたいなベッド。

振り返ると、天井と床をつないで錆びた鉄の棒が等間隔に並んでいる。

・・・違う。これは鉄格子だ。

それに気付いた途端、顔から血の気がさぁっと降りて行くのが分かった。
とんでもないことが起きてる。

牢屋なんだ、ここ・・・。

鉄格子の向こうに、小さな明り取りの窓からのぞく太陽を背にして誰か立っている。
逆光でちょうど顔だけが見えないのに、シンさんによく似た声で分かってしまった。

「また会ったな、ミナトくん・・・いや、海賊、ミナト。」

海軍中将、クラウス・フォン・ザクセンだ。


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2014.10.04 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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