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幸せな晩だった。
海軍中将が軍艦でヤマトまで乗せて行ってくれる、という申し出を無視して、シンさんの腕の中で眠った。

シリウス号に転がり込んでから初めてゆっくり眠れたと思っていたけど、シンさんと一緒だとより安心感が増すんだって気付いた。
初めはあんなに怖い人だったのに・・・不思議だな。
今ではシンさんの声が、普通に喋っていても怒鳴っていても、とにかくシンさんの声が聞こえていないと不安になってしまうなんて。
リュウガ船長が創設した海賊ギルドの本部へ繋がる地下通路は、実はギッデルンの港町の色々な所へ出られるように張り巡らされているらしい。
そのほとんどが、フリッツさんのように元は海賊で、今は港町に溶け込んで暮らしている人の家の物置裏だったり、オレがここへ連れて来られた時に入ったみたいな、人一人通れるのがやっとの狭い路地裏の突き当たりだったりと、普通に暮らしていたのではなかなか目につきづらい所にあったりする。

海軍にみつかっては困るから、地図などは存在しない。
だから、土地勘のまったくないオレにとっては、今自分がどこにいるかすら分からない。

小さなアリになって、巨大なアリの巣に迷い込んでしまったかのようだ。

船の修理が終わるまで何もしないでただぼーっとして毎日を過ごすわけにもいかないし、ソウシさんによると人は太陽を何日も浴びないでいると病気になってしまうらしいから、今日はハヤテさんの後についてドックまで行こうということになった。

あの岸壁近くまで抜けている小路もあるんだそうだ。

オレはここへ来てから毎日ナギさんの作る料理を食べているから、あの原因不明の体調不良もなくなっているし、逆にそろそろ動いて体力をつけないとね、とソウシさんのお墨付きだ。

ちょうどこの地下通路は階段や坂を登ったり降りたりするし、うってつけだ。
何日も地下にいるから、オレ自身も身体が太陽を欲しがっているような気がしていた。

「ミナト、おっせぇ!おれがいないとお前、進むことも戻ることもできないんだからしっかりついて来いよ!」
「わか、分かってますよ・・・!でも足が・・・」

ハヤテさんがドックの船に行く、というからついて来たのだけど、オレは早々に後悔していた。
初めは道を覚えがてら、少しずつ慣らせばよかった・・・。

置いて行かれないように必死でハヤテさんの背中だけを見てついて来たから、もはやここがどの辺りだか分からない。
ちょっと外に出て見ようにも、外に通じる通路がどれだか分からない。

足手まといとは、まさにこのことだ。

「ほんとにごめんなさい、ハヤテさん・・・もう少しゆっくり歩いて頂けると・・・ありがたいです・・・」

ハヤテさんはハヤテさんで、ソウシさんに頼まれた用事も兼ねているから先を急ぎたいんだろう。
「分かったよ!」って言いながら、その速度を緩めてくれる気配がない。

「もうドックには近いんですか?」
「ちょっと行って上がって下がれば着くよ。もう、どうする?ミナト。なんならここで待ってるか?」

ここから帰る時のことを考えると、少しでも本部に近い所にいた方がいいのかも知れない。
そう思ってオレは、ここに残って待つことにした。

「じゃあ、すぐ行って帰って来るから、ここで待っとけよ。」

ハヤテさんはそう言うが早いか、この暗い通路を小さなランプの灯り一つで軽快な足音を立てて駆けて行った。
それに合わせるようにしてランプの灯りも踊るように跳ね、少し先の曲がり角らしきところで消えた。

よっぽどイライラしてたんだな・・・ごめんなさい。
でも我慢してオレに合わせてくれてたんだな、と思うと、申し訳なくも嬉しかった。

もしこれがシンさんだったら、最初の分かれ道で帰らされてただろうな。

シンさんと言えば、今日は朝食を摂ったら早々に本部から出て行ってしまったけど、今頃どこで何をしているんだろう。
ギルド本部に身を寄せてから一緒に眠ったのは最初の晩だけで、近頃は昼夜すれ違いの日々が続いている。

今夜は、あの部屋で一緒に時間を過ごしてくれるだろうか。

もしそうだったら、シンさんが今日何をしていたかとか、オレがこんな風にハヤテさんの足手まといになって階段の踊り場でへたり込んでいたことだとか、またとりとめもなく話がしたいな。

そんなことを思いながら、息も鎮まって来てようやく落ち着いたので、ランプを掲げて辺りを見回してみる。
すると、今オレがいる所から建物で言うと一階層ほど上の方に、明るい光がうっすらと差し込んでいるのに気付いた。

あそこ・・・よく見ると扉だ。外かも知れない。
ちょっと覗くだけ覗いてみよう。

見てみたところでそこがどこだか分かるはずもないけど、ちょっとでもここより明るい所を見てみたい。
ただまっすぐ階段を上るだけだし、見るだけ見たらまたここに戻ってくればいい。

そう思って、オレは階段を一段ずつ昇った。


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2014.09.20 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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