上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
ギッデルンの海賊ギルド本部へ連れて来られたオレは、シリウスのみんなと無事合流できて、今はナギさんが食事の支度をするのを手伝っている。

思えば、嵐の海に投げ出されてからと言うもの、ロクに食事を摂ってない。
この原因不明の体調不良は、もしかしたらそのせいなんじゃないのか?なんて思えて来る。

それほどナギさんの料理はおいしそうで、匂いをかいで盛り付けるのを見ているだけで盛大に腹の虫が騒ぎ出す。
ナギさんを手伝うと言っても、調理自体はオレにできることがないから皿を出したり洗ったり運んだりといった、イカルガの酒場でやっていたようなことばかりだ。
だけど、あそこでこきつかわれていた賜物で、オレは片腕に料理の乗った皿をいくつも乗せて運ぶことができる。

「すごいな、ミナト。そんなことハヤテにやらせるなよ。皿が何枚あっても足りなくなる。」

ナギさんが誉めてくれた。

「俺はな・・・ガキの頃、山神への生贄として山奥に捨てられていた所を、山賊の首領に拾われたんだ。」
そして、身の上話を聞かせてくれた。

「ホントに年端も行かないガキでな。狩りもできない、村を襲うこともできない。でも生きて拾ったものを殺すのも寝覚めが悪い。仕方がないから飯場でメシを作れと放り込まれた。」
「生贄、ですか。」
「ああ。俺が生まれた所は、山の獣を取って皮を売ったり肉を食ったりするような、その日暮らしがやっとの貧しい村でな。太陽と月が同時に空にある真昼に生まれた子供を、山神への感謝の証として生贄にする古い風習が残っているような村だった。まぁ、体のいい口減らしだろうがな。」

オレが生まれ育ったアイゼン村も似たようにその日暮らすのがやっとの貧しい村だったけど、さすがにそういう風習はなかったなぁ。

「でも、どんなに子供の頃からやっていても上手にならないこともあるし、ナギさんには元から料理の才能があったんですよ、きっと。イカルガにいたときだって、ナギさんが作るメシより美味いもの食ったことなかったです。」

ずっと思っていたことを正直に言葉にしただけだった。
だけどナギさんは、顔を赤くして向こうを向いてしまった。

「お前・・・そういう恥ずかしいことを真面目な顔で言うな。」

普段、あまり感情を表に出さないナギさんがそんな顔をするから、言ったオレも照れてしまって、そこからは二人で黙々と料理を作ったり運んだりした。



大いに飲んだり食ったりして、あっという間に夜が更けた。
このギルドの本部にも、多くはないけれど宿泊できる部屋があるらしい。
オレを除く他のみんなは最初から、船の修理が終わるまでここに寝泊まりするつもりで、なぜオレだけが街の宿屋に連れて行かれたかというと、オレは海軍にまだ顔が割れてなかったし、そもそも体調が悪かったからここまで連れて来るのは無理だろうとソウシさんが判断した、らしい。

「そう言うわけだから、ここならゆっくり休めるから安心して。」
「はい。ありがとうございます。」
「私はまだ、船長に付き合わないといけないからあの部屋に戻るけれど、同じ所にいるから大丈夫だからね?」
「はい。」

ソウシさんにかかると、自分がまるで小さい子供になったみたい。
だけど、そうやって誰かに心配してもらうのは嬉しいもんなんだな。

案内された部屋は、先程までいた所とは打って変わって、まるでシリウス号の中にいるかのような簡素な部屋だった。
作りつけの棚と、部屋の隅に置かれたベッドも豪華さはかけらもない。

だけどオレにはこの方が落ち着く。
もし宿泊用の部屋もあんな調子で豪華で、高価そうに細工が施されていたりしたらどうしようと思っていたんだ。
壊したりしたら大変だから、おちおち休んでもいられないだろう。

やれやれとベッドに腰を下ろすと、思いのほか柔らかな布団がオレの身体を包んだ。
そのまま横になって天井を見上げる。
今日はとんでもない一日だった。

海軍に連れ去られたり、海軍本部の中将なんていう、普段だったら目にすることもないような立場の人と差し向って話をしたり・・・。
でもそのおかげで、オレは自分の生きる道に覚悟ができた。

そして、海賊になった。

シンさんが、オレを抱きあげてくれて、助けに来てくれて、手を引いてくれて・・・『ずっと俺の傍にいろ』と言ってくれた。
嬉しくて嬉しくて、顔がにやけてしまう。

そんなの、若い女性みたいで可笑しいかな・・・。でも・・・シンさんを好きな気持ちはもう止められない。

仕方ないよな・・・。

オレはそんな風に自分に言い訳をしながら、目を閉じた。


――――――――――――――――――――――――――――――

  


よかったらこちらも覗いてみて下さい

素敵なサイト様がたくさん お気に入りの小説が見つかるかも


↓↓↓お気に召しましたらポチッと押して頂きますと、大変嬉しいです♪
関連記事
スポンサーサイト

2014.08.23 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://futariainovels.blog5.fc2.com/tb.php/279-a66ac59c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。