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シンさんに手を引かれて、小さなランプの灯りだけを頼りに階段を下りて行く。
どれだけ目を凝らしても底が見えなくて、まるで奈落の底へ二人で落ちて行くみたいだ。

どこへ行くのか。どのくらい行くのか。

分からないし見当もつかない。

だけど、繋がれたシンさんの手が暖かい。それだけでいいような気がした。
階段をただ下りるだけじゃなくて、いくつかの分かれ道も通って来たようだ。
シンさんはそのどれをも、迷いもなく進んでゆく。

しばらく進むと道が平坦になって、突然道が遮られているのが見えた。
遮られている、というか、のっぺりした板に簡単なノブがついているだけのドアが道を塞いでいる。

そのドアのノブに手を掛けて、オレの顔の高さにランプを掲げながらためらうようにシンさんが振り返る。
そしてまた、オレの目を覗きこんで尋ねた。

「このドアを抜ければ、お前はもう元の世界に帰れないだろう。この先の世界を知ってしまったお前を、俺は帰すわけにはいかない。仲間の命が危険に晒されるかも知れないからだ。ここで帰ると言うお前を、誰も責めはしない。

・・・それでも行くか・・・?」

この先に何があるのか。オレには想像をすることすらできない。
だけどもう、オレはシンさんの繋がれた手の暖かさを知ってしまった。

包まれた胸の、脈動の激しさを知ってしまった。

それを手離すこと以上の、元の世界になんの未練があるだろう。

「・・・行きます。」

シンさんがいない世界に、もう興味はないよ。

シンさんの瞳をしっかりと見つめ返すと、心なしか微笑んでくれたように見えた。



シンさんが再び前を向き直ってドアを開けると、その先に待っていたのは、とてつもなく広い部屋だった。

「・・・うわぁ・・・」
しばらく階段を下りて来たから、ずい分地下のはずだ。
だから窓は一切ないけれど、天井からいくつも吊り下げられたガラス製の飾り照明が、ろうそくの灯りをキラキラと乱反射して、あちこちが光り輝いている。

家具や調度品、大きな楽器なども美しい彫刻が施されていて、足元の絨毯はふかふかでよろめいてしまうくらい毛足が長い。

部屋中に、お香なのか煙草なのか白い煙が充満していて、甘ったるい香りが纏わりついて思わずむせた。

開いたドアのすぐ近くにいた女の人が、背中の大きく開いた裾の長いドレスを着て座っている。
昔絵本で見たお姫様のようだ・・・と思っていると、オレの咳き込む声に気付いたのかその女の人が振り返ってこちらを見た。

「あらぁ、シンじゃない。ご無沙汰ねぇ。みなさんお待ちかねよ。」

ゆったりと腰をくねらせながらこっちへ近付いてくる。
この人は、シンさんを知っているんだ・・・。

彼女は、長い煙管で吸った煙を吐き出す時にオレを見てくすりと笑った。
「かわいい。どこの子?あたしに譲って下さらない?」
「船長は?」
「奥の部屋にいらっしゃるわよ。ねぇ、坊や。あたしと一緒にいらっしゃいよ・・・」
「あの・・・」

彼女がオレに手を伸ばして来た。
その長い爪の先が、オレの髪を掠りそうになった時、シンさんがオレの手を強く引いた。

「何も聞くな。誰とも話すな。」
「は、はい。」

「なによ、シン・・・ご挨拶ねぇ。」
彼女はなおも、オレに触れようと近付いてくる。
お姫様なんてとんでもない。彼女は魔法で若さと美貌を手に入れた魔女みたいだ。

シンさんが、引き寄せた手を後ろに回してオレを背中に隠した。
「ふざけるなカテリーネ。気安く触るな。」
「まぁ・・・シンが珍しくご執心なのね・・・。」

シンさんがカテリーネと呼んだ女性は唇を尖らせてぷんとむくれた振りをしたが、それでもオレ達に道を開けてくれた。


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2014.08.02 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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