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目の前の、威圧感たっぷりの海軍中将、クラウス・フォン・ザクセンさんが、オレをヤマトまで送ってくれるって言っている。
オレを見据える緑色の双眸が、見えない綱でオレを雁字搦めにして身動きが取れない。

オレは、どうしたらいいんだろう。

もし、シリウス号に迷い込んですぐのことだったら、オレは迷わず『お願いします!』と答えていただろう。
だって、海賊船シリウス号に乗り込んでしまったのは、本意ではなかったのだから。
でも、今は・・・?

生きて捕らえることができたら七代先まで遊んで暮らせるほどの懸賞金を掛けられたリュウガ船長。
武骨で無口だけれどその手先は繊細で器用で、どんな食材もおいしい料理にしてしまうナギさん。
海賊なのにいつも笑顔で、皆のことを心配してくれるお母さんみたいに優しいソウシさん。
向こう見ずでヤンチャだけれど、面倒見のいい兄貴みたいなハヤテさん。

そして・・・

口が悪くてとんでもなく意地悪だけれど、冷静で真面目で物知りで、ものすごい美貌の持ち主で、本当は優しい、シンさん。

世に恐れられる海賊王の率いる海賊たちは、本当は皆いい人たちだって知っている。

その上オレは、シンさんに心惹かれている。

今、オレは一体どうしたいのか。
その答えはもう出ている。

オレは、シンさんと一緒にいたい。
この先もシリウスの皆と一緒にいたい。

だから、ザクセンさんに二つ返事でお願いしますと言えないんだ。

すぐに返事をしないオレを訝ったのか、それともオレはこの問答でザクセンさんの秤にかけられていたのか、ザクセンさんの眼差しが一層鋭くなったような気がした。

「どうした?願ったり叶ったりだと思うが?」
「えっと・・・」

「それとも何か、シリウスの連中と別れられない訳でもあるというのなら、伺おう。」
「いや、その・・・」

オレには、宿屋や酒場にいるみんなと、今連絡を取る手段がない。
荷物を取りに宿屋まで行かせてくれと言っても、無駄だろう。
表にはザクセンさんの部下と思しき軍人が数人いる。ついて来られたり先回りされたりしてもやっかいだ。
どうすればいい?どうすれば・・・

考えても何もいい案が浮かばない。
そりゃそうだ。今まで生きて来た中で、こんな場面に遭遇したことがないんだから。

「ミナトくん。」

呼びかけられて顔を上げると、先程までよりはいくらか鋭さの和らいだ緑色の眼差しで、ザクセンさんがオレを見ていた。

「不慮の事故で今まで一緒にいたのは仕方がないが、ここで別れることを選択しなければ、我々は君を彼らの仲間と認識せざるを得ないんだよ。
今我々と共にヤマトへ帰るならいくらでも言い逃れを許すが、彼らと共に行くことを選択すれば、次に会った時は君を捕らえなければならなくなる。
彼らがいくら略奪を生業とする海賊ではないとはいえ、海賊は海賊だ。そんな連中と行動を共にすることで、一生を棒に振るのは頭の良い考えではないと思うが。」

・・・この人は、オレがシリウス海賊団に心を奪われていることをとっくにお見通しなんだ。
それでも目の前の民間人が海賊に成り下がることを、軍人としてはみすみす見逃すわけには行かないんだろう。
宥めるように脅しながらザクセンさんがオレを説得するのを聞きながら、でもオレは全然違うことを考えていた。

ザクセンさんは、『彼らが略奪を生業とする海賊ではない』って言った。
じゃあ何を生業としているのかはさすがに尋ねる訳には行かないだろうけど、とにかくシリウスの皆はオレが思った通り、奪ったり殺したりして来た訳じゃないんだ。
・・・よかった。

それに・・・ザクセンさんの話し声。
さっきから言われている内容は、『今彼らと別れなければ、次に会った時はお前を海賊として捕まえる』っていう、ほとんど脅しと変わらないことなんだけど・・・声が、シンさんと似てるんだ。

弦楽器の低めの音を、スッと撫でているようなそんな声。

そう思ってザクセンさんを見ていると、目の色こそ違うものの、顔もなんとなくシンさんに似ているように見えて来る。

シンさんが年取ったら、こんなカンジかなぁ・・・なんてボンヤリ考えていた。

「ミナトくん。」

再び呼びかけられて、オレはハッと我に返った。


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2014.07.12 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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