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「手紙、ですか?」
「そう。通信局は、ホラ、ここからも見える。あの建物の一階にあったから。」
「ありがとうございます。」

市場へ行ったソウシさんは、オレが家族へ手紙を書けるように紙とペンを買ってきてくれた。
その紙の表面を見ていると、オレが故郷を旅立つときに見送ってくれた、母さんと弟の顔が浮かんでくる。
病気がちの母さんのことが心配だ。返事を受け取ることはできないけれど、せめてオレが無事で元気でいることだけ伝えよう。
船長達は、街はずれの酒場にいるらしい。
ソウシさんは船の医務室に用があるらしく、晩飯の頃には迎えに来るから、と言ってまた出かけて行ってしまった。

再び一人になった部屋には、表の賑やかな様子が聞こえてくる。
目を閉じると、まるでイカルガにいるみたい。

懐かしい。

でもオレの居場所は、もうイカルガにはないような気がした。
またあの酒場でこき使われる自分が想像できない。

むしろ、シリウス号の甲板で、シンさんに罵られたりハヤテさんに剣の稽古の相手を申しつけられて、突き付けられた刃から逃げ惑ったり、それでソウシさんやナギさんや船長に笑われている自分、そっちの方が鮮やかに思い浮かぶ。

もしかしたら皆は、当初の予定通り、ヤマトに寄ることがあったらその時は、オレは皆と別れて故郷へ帰ると思っているかも知れない。
そりゃもちろんオレだって、家族の顔を見に、立ち寄ることはしたい。
だけどオレは、自分の生きたい道を見つけてしまった。

もしも機会があったら、いつか皆に伝えたい。

もちろんそんなことは手紙にはとても書けなくて、訳あっていまは遠い地にいるけれど、元気でやっているから心配しないでほしい。それが叶うようになったら、仕送りも必ずするから、と記した。

ソウシさんは、手紙を送れるだけのお金も置いて行ってくれたので、様子を見がてら通信局まで行ってみることにした。
ここから見えるくらいすぐ近くだし、ちょっとくらい大丈夫だろう。

一階の、宿屋の出入り口から通りへ出ると、荷車が「どいたどいた!」の掛け声も勇ましく忙しそうに往来していて、街の活気の良さが伝わって来る。
宿屋沿いには石造りの建物が並んでいて、通りの向かいには幌屋根を張った出店が軒を連ねている。
野菜や魚、日用品や雑貨など、ありとあらゆる物が売られていた。

店先を冷やかしながら歩いてみると、イカルガでは見たことがないような物ばかり並んでいる。
物珍しそうに眺めてしまっていたのか、ある店のおばさんが
「お兄ちゃん、何か買ってかないかい?」
と声をかけて来た。
「お遣いなんだ。おつりが出たらね。」
と言ってかわして、すぐ目の前に迫った通信局へ急いだ。

ヤマトはともかく、アイゼン村はホントにイカルガからも程遠い、人里離れた山間の村だから、こんな所から手紙が届くか心配だったけど、ヤマトに届きさえすれば大丈夫と言ってくれて安心した。

通信局の壁に貼ってある地図を見上げて、ヤマトはどこか、ギッデルンはどこか、と尋ねると、ヤマトから海を越えて大陸を越えて、想像もつかない程はるか西へやって来たのだと言うことが分かった。

生まれて初めて船に乗ったのに、それでいきなりそんな遠くに来てしまっただなんて、話が大きすぎてまたクラクラと眩暈がしてくるようだ。
あの時ああだったら、こうだったら・・・とは思わなかった・・・と言えば嘘になる。
だけど、それをしたところで今オレがここにいるのは紛れもない事実だ。

だったら。

初めての土地。
初めて見る風景。
初めて食べる味。

もういっそのこと、それを楽しんでしまうしかないよ。

ソウシさんにもらったお金を払ったらおつりが出たので、さっきのおばさんの所で何か買おう、と思って通信局を出たところで、突然目の前に影が差した。

何だろう、と思って見上げると、海軍の制服に身を包んでおっかない顔をした男が数人、オレの行く手を塞いでいた。
しかも、
「お前、シリウスの連中と一緒にいたな?」
と声を掛けられ、オレは魔法にでも掛けられたみたいに身動きができなくなってしまう。

どうしよう。こんな時どうすればいいんだろう。

迷っているうちに、軍服の一人に手首を掴まれて、抗うこともできずに引きずられてしまった―――――・・・


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2014.06.28 Sat l 恋に落ちた海賊王 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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